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‥‥自分が『最も言いたくないセリフ』を、この男は『聞きたがっている』のだ。
神楽は覚悟を決めた。
そうだ。此処まで来たらもう、後戻りなぞ出来ないのだ。
「『海外から来る有名絵画を強奪し、身代金を奪い取る』計画です‥‥。そのための資金をお借りしたくて参りました」
そう、『これ』は何処からどう見ても紛うことなき立派な『犯罪』なのだ。これが表に出たら『計画している』というだけで、自分は社会的に『終わる』だろう。
「ほぅ‥‥」
男の口角が微かに上がる。
「面白そうじゃねぇか‥‥」
男は神楽の話にノッてきたようだ。
「最近はよ‥‥『オンナでトチって解決金が要る』だの『取引でシクって賠償金を借りたい』だのと、ドタマかち割ってやりてぇようなショボい『案件』が多くてな‥‥正直、ムカムカしてたんだ」
男は、店の奥に居るマスターに『コーヒーくれ』と声を掛けた。
「オレはな‥‥銭儲けの為に『金貸し』やってんじゃぁねぇんだ。そういう『ヒリつくような』面白れぇ話に首ぃ突っ込んで『遊ぶ』ために‥‥『金貸し』をやってんだよ」
「う‥‥」
言葉が出ない。
とてもではないが、マトモな人間の吐くセリフではない。
‥‥やはり、聞いた通り『頭のネジが飛んでる』男だ。
どうなんだろうか? 一抹の不安が頭をよぎる。
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