突きつけられる『条件』

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突きつけられる『条件』

神楽達夫は国立帝都美術館で、特に西洋絵画を担当する学芸員をしている。 経験年数も長く、この部門では『主任』としての地位にも着いていた。 ‥‥それは、3ヶ月ほど前の話だった。 帝都美術館では、以前より日本人に人気のある『印象派絵画』の特別展を企画したいという意向があり、有名作品を所蔵している著名な美術館への打診を続けていた。 しかしながら、何処の美術館でも『所蔵の目玉』とされるような有名作品の貸出しには極めて消極的なのが通例である。 そのため、そうした企画展の実施においては『タフな交渉が付き物』と言って良かったが‥‥ 今回、帝都美術館による『印象派絵画の特別展』企画の中でも『もっとも交渉が困難』とされたのが、フランスの『ラルセー美術館』が秘蔵している100号の名品『湖畔に立つ女』であった。 帝都側としては、印象派を語る上で欠かせない作品であり『ポスターにすら使えるほどの逸品』として『企画展には外せない作品だろう』と見ていた。 しかし、何しろ相手は100年以上の歴史を持つ『超一流の世界的美術館』である。ツテを頼って話を持ちかけたが、最初は歯牙にも掛けて貰えなかった。 ところが。     
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