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「実際、もしも『湖畔に立つ女』がサザビーズなどのオークションに掛かるような事になれば、金額は天井知らずでしょう。最低でも、100億円とか‥‥そんな値段になります」
しかし、だとすれば‥‥だ。
「そりゃ安かぁねぇが‥‥『たかが』100億円の絵を、僅か20日間だけ貸し出すのに『4億円』も持っていくってのか?」
蛇道の疑問も『もっともだ』と、神楽も思う。やはり金融屋だ、その金銭感覚は『まとも』と言っていい。
「仰るとおりです。普通なら、まったく有り得ないでしょう。しかし、この絵を日本に招致する『千載一遇の好機』と捉えれば‥‥」
ラルセー側としても『プレミア感』を出すことで、値の吊り上げを図っているのだ。
それは、帝都側としても理解している。
「む、無論、4億円全てがラルセーの『儲け』にはなりません。保険を引き受ける『ローズ保険組合』の支払いに1億円は必要と聞きますし、運搬やセキュリティに掛かる経費も莫大です。多分、純然たる『儲け』は2億円を少し超える程度でしょう」
それでも『2億円』だ。『いい商売』と言って過言ではあるまい。
「けっ‥‥! 他人様が『儲ける』ってなぁ‥‥気分が良くねぇが‥‥で、『それが気に食わなねぇから』って理由で『横取り』すンのか?」
ギロリ、と蛇道がメガネの奥から睨む。
ウソ偽りを見逃さない、恐ろしい眼力だ。
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