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「いえ‥‥そうではありません。当然、金額は議論になりましたが‥‥トップが『OK』を出せば、それまでの話ですから。‥‥問題はその後で、それも偶然に分かった事です」
急遽、企画展が開催可能となったことで、他の作品についても大慌てで調達が始まった。
その際、ロシアの美術館から買い付けた『同時代に作られた100号の作品』が、よほど保管状態が悪かったらしく『届いたらボロボロで展示出来る状態ではなかった』のだ。
そこで、周囲が唖然とする中『どうにか見せられる状態にして企画展に出そう』と、神楽が修復を買って出る事にした。
印象派絵画に関する造詣の深さと、その技量の確かさにおいて、神楽の右に出る人物は『日本には居ない』と、自他共に認めるからこその『手入れ』だ。
通常、こうした修復には『当時と同じ絵の具』が必要になる。現代の絵の具とは『発色の度合い』が大きく異なるためだ。
そこで、作者の故郷であるフランスの老舗画材店に『専用の絵の具はあるか』と尋ねたのだが‥‥
「ふ、不思議な事に『ほぼ全色に渡って在庫がない』という返答が来たのです。こんな事は有り得ません! ‥‥よほど直近に大量の『買い付け』があれば別ですが‥‥」
「ほぅ‥‥?」
蛇道の眼が怪しく光る。
「て、ことは?」
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