波紋

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波紋

 物事の見え方は、一通りではない。ある人が見た時の捉え方とまた別な人が見たときの捉え方が全く違うというのは、往々にしてあることだ。そう考えると、我々人類にいさかいが絶えないのも無理のない話なのかもしれない。世界恒久平和の道程はまだまだ長い。気長に達成されるのを待つつもりではあるが、せめて死ぬ前に、全人類が手を取り合って生きていけるような世界が訪れることを願う。なかなか無理そうではあるが。   質実剛健を校訓に掲げる我が、神宮かみのみや高校は、進学実績も去ることながら、放課後の部活動も大変盛んである。  高校の部活の花形と言えば、幾分か下火になったとは言えど、高校球児達が繰り広げる野球であろう。予選には受験を控える三年生も応援に行き、教職員も野球部の試合結果を気にする。  そんな球児たちの声が校庭に響き、それに合わせるように他の部活動の声が聞こえてくる。  もちろん盛んなのは運動部だけではない。一部の文化部の練習の雰囲気は体育会系そのものである。夏の暑さが残る九月、練習を終えた俺はウォーターサーバーで水を飲みながら、そのような激しい文化部の一つである、演劇部の面々を俺は見ていた。     
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