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「陽菜が出た時に部長さんの鞄はあった?」
「ごめんなさい。よく見ていないんです。急いでいましたから」
萌菜先輩は少し考え込むようにして、
「北村さん。それだけで陽菜を犯人と決めるのは少し乱暴じゃないかしら」
「じゃあ、他に誰が出来たっていうのよ。もし誰かが他に上手袖に入ったら、絶対わかるわよ。私ずっと上手袖の前にいたんだから」
「あらそう。それで無くなったことに気付いたのは何時なの?」
「四時半に休憩に入った時よ」
「舞台袖に入るのに、別に舞台に上がる必要はないわよね。ほら舞台の下からでも扉を通って」
「それもないわ。この子に聞いてよ」
北村はその場にいた、一人の女子生徒を萌菜先輩の前に連れてくる。
「あなたは?」
「バスケ部のマネージャーです」
「どうしてあなたが舞台袖に誰も入らなかったことが分かるの?」
「はい、私ずっと扉の前に座ってましたから」
「四時前にも誰も入らなかった?」
「はい、入りました。三時五十分に出てきた人がいます」
「よく細かい時間まで覚えていたわね」
「はい、その人に時間を聞かれたので。……四時十分前ねって、確認もされましたから」
「四時以降に上手袖に入った人はいないわけね」
「はいそうです」
すると、北村が勝ち誇ったように言う。
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