波紋

11/35
前へ
/35ページ
次へ
「ほら、犯人は陽菜しかいないじゃない」 萌菜先輩は軽くスルーして、 「ところで、上手袖は全部探したのかしら。結構雑然としているけど」 「探したわよ。隈なく」 「もう一回探してみたら?」 「ふん」 そう言って、北村は上手袖をもう一度探し始める。いや正確には探させるというべきか。俺たちも一緒に袖を見回る。それなりに大きい鞄だと聞いていたから、ありそうな場所を見るのにそれほど時間はかからなかった。  探していて、時計の下の床のみがきれいに拭かれていたことに気付いた。何とも適当な掃除の仕方だ。どうせ拭くなら、全体を万遍なくやればよいのに。  一通り見回ってから、萌菜先輩は、俺と雄清を手招きして体育館の外に連れ出した。 「どうだ、深山君」 「どうといわれましてもねえ」 「陽菜が犯人だと思うか?」 「あなたはそうは思っていないんでしょう」 「そうだが、君の客観的な意見が聞きたい」 「……ちょっと来てもらえますか?」  俺は雄清と萌菜先輩を連れて、体育館の北側、上手袖の外側に向かった。体育館の北側は垣根があり、すぐそこに道路がある。他には何もないので、普段は人気のない所だ。ちょうど上手袖の横あたりに来て俺は立ち止った。     
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加