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「ほら、犯人は陽菜しかいないじゃない」
萌菜先輩は軽くスルーして、
「ところで、上手袖は全部探したのかしら。結構雑然としているけど」
「探したわよ。隈なく」
「もう一回探してみたら?」
「ふん」
そう言って、北村は上手袖をもう一度探し始める。いや正確には探させるというべきか。俺たちも一緒に袖を見回る。それなりに大きい鞄だと聞いていたから、ありそうな場所を見るのにそれほど時間はかからなかった。
探していて、時計の下の床のみがきれいに拭かれていたことに気付いた。何とも適当な掃除の仕方だ。どうせ拭くなら、全体を万遍なくやればよいのに。
一通り見回ってから、萌菜先輩は、俺と雄清を手招きして体育館の外に連れ出した。
「どうだ、深山君」
「どうといわれましてもねえ」
「陽菜が犯人だと思うか?」
「あなたはそうは思っていないんでしょう」
「そうだが、君の客観的な意見が聞きたい」
「……ちょっと来てもらえますか?」
俺は雄清と萌菜先輩を連れて、体育館の北側、上手袖の外側に向かった。体育館の北側は垣根があり、すぐそこに道路がある。他には何もないので、普段は人気のない所だ。ちょうど上手袖の横あたりに来て俺は立ち止った。
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