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「犯人が誰かはまだわかりませんが、陽菜や他の人が部長の鞄を持って上手袖から出てきていない以上、鞄は窓から出入りしたことになります」
「だけど太郎、何もないじゃないか」
「鞄を窓の近くに捨て置く道理はないだろう」
「ああそっか。……それなら、犯人が上手袖に入るところを誰にも見られずに鞄を盗めるね」
「だが、それには問題がある」
「何が?」
俺は窓に近づき、手で開けようとするがびくともしない。
「この通り、窓は閉まっているんです」
「なるほど。外から侵入することは不可能か」
「すると、陽菜以外に容疑者がいる可能性も提示できないわけだな」
「残念ですが。……三時五十分に上手袖から出てきたという人の話を聞きたいんですが」
「そうだな。一旦上手袖に戻るか」
俺は去り際、後ろを振り返り、日中も日が差し込まないために冷たく湿った体育館裏の地面をちらりと見た。
北村はかなりいら立っているようだった。先ほど、大会前だと言っていたので、そのこととも相まって、イライラはピークなのだろう。
「それで、委員長様、何か考えは浮かびましたか?」
どうせ、なにも思いつていないだろうという言いぶりで、北村は言い放つ。
「バスケ部のマネージャーさんが見たという人を連れてきてほしい」
萌菜先輩は気に留めない様子で話す。
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