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上級生の厳しい声が飛び、下級生が縮こまっている。こう言う情景を見ると、いつも思うのだが、萎縮してしまうような雰囲気は部活をする上で役に立たない、むしろ害悪であると。
だからといって俺は、声を張り上げる御仁に、提言することもなく静かに見ているだけなのだが。
しかし、糾弾するような声の、話の内容を聞くに、ことはそう単純なものではないようだ。
「いったい誰なの!正直に名乗りでなさい」
上級生が言う。どうやら誰かが何か良からぬことをしたらしい。
「人のものを盗るなんて、最低よ。人間性を疑うわ」
窃盗か、物騒だねえ。ぎゃんぎゃん騒いでいるのはおそらく、ものをとられたとか言う御仁なのだろう。ことがことなだけに周りの上級生らしき人達も、彼女をなだめられないでいる。
それにしても、この学校ではよく窃盗が起こるなあと思う。俺が知っている限りで、携帯電話の窃盗と、佐藤の二つの件とで三つも今年のうちに起きている。どうにもこの学校は俺に平穏な高校生活を送らせたくないようだな。
それはそれとして、目の前で起きている事件が俺に飛び火しないうちに、さっさっとずらかろうと思い、足早に水のみ場を後にした。
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