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犬も歩けば棒に当たるとはよく言ったものだが、棒が見えても避けてしまえばいいのだ。たとえぶつかったとしても、後ろに下がり、頭をさすりながら、一歩横にずれればうまくすり抜けられるものである。演劇部内で問題が起ころうと、所詮部外者でしかない俺は関わらなくていいはずであるし、関わろうとしても(もちろんそんな気は全く無いが)関係者はいい顔をしないだろう。
高校入学以降、数々の問題に仕方なく巻き込まれてきた俺ではあるが、未だに、平穏な高校生活を諦めてはいないのだ。
部室に戻り、着替えを済ませ、少し休憩をとってから、いざ帰ろうとしたところ、雄清が部室へとやって来た。
「よかった、太郎、帰ってなくて」
「今帰るところだ。山岳部員は暇ではないのだ」
「それはごもっとも。でも帰る前に少し手伝ってほしいことがあるんだけど」
「……何だ」
「実はちょっと問題が起きてね」
「演劇部の話じゃないだろうな」
「知ってるのかい?なら話が早い」
俺はようやく悟った。棒に頭をぶつけてしまえば、決してそれから逃れることはできないのだと言うことを。
「犯人見つけろってか?」
「まあ大体そんな感じだけど、ちょっと違うかな」
「何だよ」
「かわいそうな、無垢な市民を救ってほしいのさ」
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