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雄清曰く、演劇部の二年生の鞄が紛失し、ある一年生の演劇部員に嫌疑がかけられているらしいんだが、雄清と同じく生徒会執行部の構成員であるその一年生は普段の生活態度から見るに、到底そのようなことをする人物ではないらしい。本人も犯行を認めてはいないのだが、部内でアリバイがなく、かつ、犯行時刻と予想された時間に、盗難場所へ近づいた人間が他にいなかったために、その一年生が犯人として疑われているらしい。
「盗まれた鞄は大きいのか?」
「そう、聞いてるよ。多分僕や太郎のザックと同じくらいの大きさだと思う。色はピンクだったかな」
「鞄は今どこにある?」
「それがわかんないんだよ」
「ふーむ」
俺はその容疑者の子のことを知らないが、雄清が信を置くからには、それなりに誠実な人間なのだろう。もちろん雄清に言われるがまま、その生徒を完全に白だとするのは早計だが、とりあえずはその生徒が犯人ではないと仮定して考えよう。
「太郎、助けてくれるのかい?」
「一応考えてはみるが」
「頼むよ、女傑のご意向でもあるからね」
「萌菜先輩か」
綿貫の従姉、綿貫萌菜は執行部のトップだ。執行委員の一人が濡れ衣を着せられるのを黙って見てはいられないのだろう。萌菜先輩に頼まれるからと言って張り切る俺ではないが、いい加減な仕事はできないなと思った。
「まあとりあえず、現場を見に行こうか」
「そうだな」
雄清と二人で、演劇部の活動場所である体育館へと向かった。
体育館の入り口に行くと、萌菜先輩が立っていた。
「深山君来たね。また君たちに手伝ってもらうことになったが、よろしく頼むよ」
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