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もはや問題に首を突っ込まざるを得ない段階に来ていたのは分かっていたが、何となく、言われるがままに手伝うのが少し癪に障ったので皮肉を言ってみたくなった。
「萌菜先輩、勘弁して下さいよ。俺たちは推理クラブじゃないんですよ」
「おや、もう女史とは呼んでくれないのか?」
「あなたが周りに特別視されることを嫌っていたからですよ。というか話をそらさないでください。他の事ならまだしもどうして俺たち山岳部が警察のまねごとをしなければならないのですか」
「おかしいな。さやかは確か、君がこういうのは得意だと言っていたんだが。それに」
そういって、萌菜さんは俺の耳元に口を近づけて、
「山本君は君がさやかと旅行したことを知らないんだろう。君がこの件に役に立つと判断した理由を詳しく話さなくてはならないのだとしたら、そのことも言わないと…」
と意味ありげに目配せをしてくる。ばらされたくなかったら素直に従えという事か。前々から思っていたことだが、同じ綿貫家の人間でありながら、綿貫さやかと萌菜先輩とでは性格が全く違う。
結局こき使われている点では同じなのだが。
「分かりましたよ。手伝えばいいんでしょう」
「よろしく頼む」
全くこの御人は。
雄清は俺と萌菜先輩との会話を不自然に感じたようで、
「何の話をされたんだい?」
「別に、簡単な取引さ」
「なんだよ」
「それは言わん」
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