波紋

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 親切にしたことがかえって足かせとなるとは、全く辛い世の中である。 「それで現場はどこですか?」 「上手袖だ。来てくれ」 萌菜先輩が体育館のステージ側に向かったので、俺たち二人も後ろに続く。  上手袖に入ると演劇部員と思われる面々が何人か詰めていて、先ほど俺が見た、声を張り上げていた二年の女子生徒もいた。 「あんたがやったってのはもう分かっているのよ。私の鞄をどこにやったのか早く言いなさいよ」 「私本当に何も知らないんです。信じて下さい」 どうやら嫌疑をかけられた執行委員というのはこの女子生徒らしい。 「嘘よ!」 ああ、そんな興奮するなよ。と俺は思いながら、どうしたものかと萌菜先輩の方を見る。すると、萌菜先輩が来たことに気付いたある演劇部員(おそらく二年生の)が、被害者に耳打ちする。 「執行委員長が来ましたよ」 すると、その被害者はこちらを見て、 「これはこれは、綿貫委員長様。執行部が何の御用件ですか?」 なるほど、俺の苦手なタイプだ。嫌味な感じがにじみ出ている。誰が鞄を盗んだのか知らないが、そいつの気持ちも少しわかる気がする。萌菜先輩はその被害者に向かって言う。 「あなた演劇部の部長さんよね」 ほう、被害者が部長とは、この部活、相当情勢が、崩れているな。 「ええ」     
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