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そう言って演劇部のマネージャーのほうを向く。
「はい、確かに四時でした」
「それであなたが陽菜を犯人だと考える理由は?」
「この子が一人で上手袖に入って行ったのを見たからよ」
「それは何時?」
陽菜が答える。
「上手袖を出たのは四時五分です。委員会が長引いて部活の開始に遅れてしまったんです」
「それは確かに正確な時間なの?」
萌菜先輩は陽菜に聞きなおす。
「はい。上手袖のあの時計を見ましたから」
陽菜が指さすその先には壁に掛かった時計があった。萌菜先輩はその時計の時刻と自分の腕時計の時刻を見比べる。俺も同様に確かめたが、時間は一致している。
「それがおかしいって言ってんのよ。あんたが舞台に出てきたのは、とても私たちの五分後だったとは思えないわ」
このイライラしやすそうな部長が実際の五分を、十分や、十五分のように感じてしまうというのはありそうなことだと思うのだが。
萌菜先輩は冷静に、
「ステージ横にある時計で確認しなかったの?」
「舞台からじゃ時計は見えないのよ。確かめてごらんなさいよ」
萌菜先輩が舞台に出て、俺と雄清もそれに続いた。
確かに舞台横にある時計は舞台の下に降りなければ、見ることはできなかった。
上手袖に戻って、萌菜先輩は質問を続ける。
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