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夕飯の後、私は再びほうじ茶を二人分入れた。
寝室からチョコレートの紙袋を持ち出して、
由奈の前でそれを開けた。
「何それ? ……バレンタインの?」
「うん」
私は綺麗な包装をビリビリと破いて開けた。
「……いいの?」
私は自分の意思を表すようにしっかりと頷く。
「もう……あげられないから」
引き出し式の小さな箱をスライドさせて中身を見ると、
宝石のようなピカピカのチョコレートが並んでいる。
由奈は何も言わなかった。
「食べよ?」
私が先に手を伸ばして小さなチョコをつまみ取る。
私がそれを口に放ると、由奈も私に続いて一つを口に入れた。
「おいしいね」
「うん、おいしい」
二人の目には涙が滲んでいた。
口の中には甘さが広がって、
いつまでも溶けきらないその甘さをほうじ茶で流し込んだ。
一人なら無理だけど、
由奈と一緒なら、
このチョコレートも全部食べきってしまえそうだった。
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