片想い

20/25
前へ
/25ページ
次へ
夕飯の後、私は再びほうじ茶を二人分入れた。 寝室からチョコレートの紙袋を持ち出して、 由奈の前でそれを開けた。 「何それ? ……バレンタインの?」 「うん」 私は綺麗な包装をビリビリと破いて開けた。 「……いいの?」 私は自分の意思を表すようにしっかりと頷く。 「もう……あげられないから」 引き出し式の小さな箱をスライドさせて中身を見ると、 宝石のようなピカピカのチョコレートが並んでいる。 由奈は何も言わなかった。 「食べよ?」 私が先に手を伸ばして小さなチョコをつまみ取る。 私がそれを口に放ると、由奈も私に続いて一つを口に入れた。 「おいしいね」 「うん、おいしい」 二人の目には涙が滲んでいた。 口の中には甘さが広がって、 いつまでも溶けきらないその甘さをほうじ茶で流し込んだ。 一人なら無理だけど、 由奈と一緒なら、 このチョコレートも全部食べきってしまえそうだった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加