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ドアを開けるなり、
私にしがみつく純也さんにそのまま胸まで押し潰されそうだった。
別れを切り出すこの瞬間に
愛おしさが込み上げるのはどうしてだろう。
純也さんは私をすぐにでも欲しがっていた。
それは
私を引き止めたくて
私との隙間を繋ぎ合わせたくて
そうさせるのかもしれなかった。
純也さんが無理やりにでもそうしなかったのは
私が女で
バカだから。
すぐに涙を流して
しゃくりあげるからだろう。
「……ごめんなさい……」
「俺が……幸せにしたかった……」
私たちが交わした言葉はそれだけだった。
何も言わなくてもわかり合えるなら
それは理想の恋人なのかもしれない。
だからこそ今、
こんなにも愛おしさが込み上げるのかもしれなかった。
今なら
今までで一番優しいキスが出来そうだった。
もちろん
それは出来なかったけれど。
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