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「この先、何があっても俺と桜井は親友だから。鈴ちゃんは心配しないで」
純也さんは私を『鈴ちゃん』と呼んで
口づけをする代わりに
抱きしめる代わりに
私の頭を撫でて
玄関のドアを押した。
静かに閉まる玄関が音もなく私たちの終わりを告げて
涙に濡れた私たちの切ない夢は儚く消えた。
お昼を食べず、少しだけ夕飯を口にした私は
この夜
初めて純也さんのことを想って泣いた。
誰かを想って泣く夜は
自分がひとりぼっちだってことを痛感する。
何度も涙を拭いて、瞼はヒリヒリと痛み
私の心も
同じだけ痛かった。
それでも
この痛みと引き換えにでも私が欲しかったのは
包み隠さない自分の気持ち。
『健吾くんが好き』
それだけだった―――。
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