【開店 名もなき著者の歌】

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【開店 名もなき著者の歌】

 名もなき書を開きて読める   言の葉を 綴りし我は 鵺鳥(ぬえどり)の    のどようさまに 似たりけるかな                  兵衛佐(ひょうえのすけ)大江兼俊(おおえのかねとし)           ○  ずっと誰かを探している。何よりも大切だったはずの人。今はもう会えない人。  けれど、その顔を、その声を、思い出すことができない。時が流れ過ぎてしまった。今はもう、あの時とは違う姿になっているかもしれない。きっと顔を合わせても気が付けない。  それでも、ずっとその人を探している。  どれだけ離れようと、どれだけ時が経とうと、君を探すだろう。  また、あの頃のように、かわいらしい笑顔を浮かべながら、私の物語を聞いておくれ――。
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