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 結衣花は、目を開けた瞬間、はっと身をすくめて上体を起こした。薄暗闇の中でほとんど見えない。腰と脚の下に冷たいシーツの感触があった。反射的に下半身に手をやると、何も着けていない。やばい。  枕元を手で探った。スマホは見当たらない。でも、頭の方のボードを探るとスイッチに手が触れた。それを押すと、灯りの中に部屋が浮かび上がった。自分はベッドの中にいた。どうやらホテルの一室のようだ。左隣には、見知らぬ男が背を丸めて眠っている。素早くあたりを見回すと、床の上に自分のワンピースや靴下が落ちていた。彼女は、思わず息を飲んで、恥ずかしさで胸をおさえた。  こんなことになるの、初めて。どうすればこうなるの?  必死に思い出そうとするが、二日酔いの朦朧とした頭では記憶を呼び戻せそうにない。  ベッドサイドランプの煌々とした光のせいで、隣の男がごそごそ身体を動かして、眩しそうに目を擦り始める。  「見ないで!」と、結衣花は小さく叫んでシーツを手繰り寄せた。  「何なのよ、いったい。」  「何が?」  「あなた、誰なの?」  「おい、それはないよ。覚えてないの?」
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