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拓也は学校を出ると駅前のカフェへ向かった。
彼は少し楽しみだった。
これは何かのゲーム? あるいはドッキリの類に違いないと踏んでいた。
そして彼女が、どの様な形でネタばれするつもりか興味があった。
カフェに到着すると、そこは物凄い人だかりだった。
それも拓也の高校の制服ばかり。
遥が拓也に告白した情報は、1日で高校中を駆け巡り、みんな怖いもの? 見たさで集まって来たのだ。
「よっ、お拓也、頑張れよ!!」そこら中で声が上がる。
拓也は(まったく、お前ら暇だな)と思いながらカフェの中に入った。
中もほとんど、同じ制服で埋め尽くされていた。
奥の席に遥が座っていて携帯で話している。
遥は拓也を見ると電話を切った。そして立ち上がって彼に近づいて来た。
「拓也君、ここでは話せないから、別の所に行きましょう」
そう言って、遥は拓也の右手を掴んだ。
「えっ?」と驚いている拓也の手を引きながら、彼女はカフェの外に出た。
そこに黒塗りの高級車が走ってくる。
車が停まるとドライバーが降りて来たが、遥はそれを待たずにドアを開け、拓也を後席に押し込んだ。そして自分も乗り込むとドアを閉めた。
ドライバーはそれを見て運転席に戻った。
「高山さん。それでは横浜ベイパークに向かって」
「はいお嬢様。承知致しました」
運転手はそう応えると車は走り始めた。
「すごい人だかりだったね」
遥が満面の笑みで拓也を見ながら言った。
拓也は未だ、何が起こっているのか把握しかねていたが、彼女がこの”遊び”をどう決着させるつもりなのか、正直とても興味があった。
これが彼女の本意に基づくとは”到底”考えられなかったからだ・・
「遥さん、質問していいかな?」
遥が首を傾げながら大きな目で拓也を見た。
「遥でいいわよ。私も拓也って呼ぶから。質問って何?」
そう言いながら、にっこり笑った。
(こいつ本当に可愛いよな・・)
その笑顔を見ながら拓也は思った。
「俺たち殆ど話したこと無いよな。確か入学式で新入生代表挨拶を二人でやった時以来だ。そして俺は最低クラスのF組だ。俺のどこが好きになったの?」
遥の大きな目が瞬きした。ふーんと言って意地悪そうな顔を見せた。
「それは、まだ内緒。後で教えてあげる」
そう言うと遥は黙ってしまった。
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