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「それじゃ、6ゲーム1セットを先取した方が勝ちでいい?」
テニスコートに移動して遥が言った。
拓也は頷いた。そして思った。
(多分、俺は1ゲームも取れないと思うけどね)
「サーブ、レシーブ、エンド、決めていいわよ。これだけはハンデね」
拓也は溜息をついて首を振った。
「それじゃ、レシーブで。エンドはどっちでもいいや」
「ふーん、サーブじゃないんだ・・やっぱりね・・」
コートを分かれて拓也は再び溜息をつきながら構えた。
テニスをやるのは本当に1年半振りだった。
身体はすっかり鈍って・・
遥がサーブに入った。
「しかし、あいつ。どう言うつもりで・・」
遥がトスアップしている。
「仕方ないな・・ 久し振りに真面目にやるか・・」
と拓也が言った瞬間、遥のサービスがライン際ギリギリに物凄いスピードで突き刺さった。
拓也は、動く事も出来なかった。予想通りのサービスエースだ。
「フィフティーンラブだね・・」
遥が微笑みながら言った。
拓也が不満の声を上げる。
「お前、素人相手に、そんな本気なサーブするなよな」
拓也のその言葉を無視して、遥が、またトスアップする。
「本当は、素人じゃ無いで・・しょ!!」
また、同じ速さでラケットが振り降ろされる。
「あいつ、手加減を知らない・・」
拓也は両目で遥が振り降ろしたラケットとボールの軌道に集中した。
身体が勝手に動き、足がコートを蹴った。
そして、さっきと同じコースとスピードで跳ねたボールをバックハンドで打ち返した。
ボールは遥のコートに突き刺さった。
遥が目を見開いて拓也を見ている。
「フィフティーン フィフティーンだね」拓也は言った。
遥は首を振っていた。
「やっぱりね・・でも、ここまでとは・・」
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