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そうは言ったが、あれから二週間。アクバルの警戒は洗練された無駄のないものでアユでなければままならないものだった。
「ただいまー」
「お帰りー」
「いつもの用意してくれたの」
「もちろん。その前に手を洗ってきて」
「ふふふ、いつまでも言われた後で洗いにいく私じゃないのよ」
そういい手を広げて見せてきた。アユの言う通り、手は石鹸でちゃんと洗われていた。
「よし、じゃあ今日はご褒美にこんなクッキーをどうぞ」
そういい、アユの前にクッキーがある皿を置いてあげた。その上に置かれたクッキーを見て、目を輝かせたアユはボクとクッキーを交互に見てきた。
「べ、別にこんなの頼んでないし、でも……その、あ、ありがとう」
照れ隠しで抱き着いてきた。その手にはアユの手のひらに収まるくらいの小さく丸いクッキーがある。
本人は一言も言ってないが時々アユはボクとトモマサが片手で持つクッキーとアユが両手で持つクッキーを見比べていた。本当は自分も片手で一口でクッキーを食べたいのだろう。
本人はそのことを言うのが恥ずかしいからか口にはしないが、トモマサがいうところの目は口程に物を言うってやつ。そこで暇だったのもありボクはアユにあった大きさのクッキー制作に乗り出し今日完成したっというわけだ。
最近、アユを我が子のように接しているとお母さんの気持ちがわかってきた。そんな気がする。
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