石川幻慈さん

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恋美はできる訳ない事を言うから、地獄に落とされた気分である。しかし時子は、 「それができるんだよねぇ~私を誰だと思ってるの」 と言いながら、自分の鎖骨の辺りをポンと叩くと、徳代は、 「平家一門の血筋ってやつかぁ」 そう答えた。 「そう! でもそうじゃなくても、今から言う呪文を唱えればあの世に行けるの」 そんなあり得ない事を時子はつらつらと話し出した。 「どうやってやるの!? 」 恋美は必死に聞いてた。その為、徳代と時子は半笑い状態だった。 「じゃあ言うよ。ロウソクを真ん中にみんなで円になって手を合わせてみんなで叫ぶの。『石川幻慈さん成仏してください! 石川幻慈さん成仏してください! 』って」 「石川幻慈さん成仏してください石川幻慈さん成仏してください」 恋美は必死で練習していたので、徳代と時子はバカじゃないという顔で目を合わせていた。 「それを唱えるとあの世にいけるんだけど、そこからの道順を説明するね」 「道順? 」 「うん! 」 瑠梨が言葉を繰り返している横で、恋美は必死になって聞いていた。 「気が付くと、暗い霧のかかった森にいる。前の木には立ち止まるべからずと書かれている。そこから右に行って5本目の木を左行く」 「右に行って左ね! 」 恋美は繰り返し言いながら、手に地図を作るようになぞっていたので、徳代は笑いそうになるので手で口を押さえて、顔をそらして我慢していた。 「ちょっと行くと穴の開いた木があるからそれを左に行って3本目の木を右に行って真っ直ぐ行くと・・・」 時子はそうつらつらと話していた。 徳代と瑠梨は、うそと分かってるので適当に聞き流しているが、恋美はだけは真剣に聞いている。 「キコリが木を切っているから、それを右にずっと行くとカラスの泣き声が聞こえたら右にまがる。そこから13本目の木を右に行って、9本目の木を右にまがって少し行くと石川幻慈さんがいるから」 「え・・・ちょっと待って! 13本目の木をどっちだったけぇ!? 」 「じゃあ行こうか! 」 恋美が必死に聞いているが、時子はそれをかわした。 「ちょ・・ちょっと待ってよ! お願いだからもう1回教えてよぉ~! 」 恋美が必死で訴えるが、時子は答えようとせずに、 「ダメだから。1回で覚えないと石川幻慈さんに殺されるよ」 「えっ! 」 時子はそう言っているが、ただ単に自分も適当に言っているので覚えていないのである。 「じゃあ行くね」
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