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カラスの鳴き声とともに、カラスが羽を落としながら飛び立っていった。恋美はビックリして顔を伏せてうずくまった。
「ビックリしたぁ~・・・」
恋美は涙がちょちょぎれそうになりながらビクビクしていた。もしこのコメディーなら“初めてのおつかい”的なナレーションとかがつきそうだが、これはホラーなので絶対にあり得ないのである。
とにかく恋美は気を取り直して立ち上がり、
「よし右」
そう言いながら、ビクビクしながらも前へと進んだ。
ここからの道のりはさっきよりも長かった。霧の中をかき分けながら、恋美は迷子にならないように木の数を慎重に数えていた。
「13! よし右だ」
13本目を数えて恋美は右にまがり、9本目で右にまがって、
「4本目! ・・・あれぇ!? 」
時子が言った道順通り恋美は来たはずである。しかしそこで異変が起こった。その4本目の木には、『立ち止まるべからず』と書かれているからだ。
「ここ最初のところじゃん! どこかで間違えたかなぁ・・・どうしよう・・・」
恋美が涙がちょちょぎれながらパニックっていると、
「そなたか、我の話をするのは・・・」
「うん? ・・・」
どこからか、男の低い声が聞こえてきた。こんな暗闇で霧のかかった森で変なおじさんに会ったらどうしよう。ヤバい。
「そなたか、我の話をしているという者は」
トン・・・トン・・・
ヒュー
その時杖をつく音が響き、そして風が吹き荒れた。
「えええ! 何何!? 」
恋美はその場から逃げようとすると木の根に引っかかって転んでしまった。でもその杖の音は近づいてくる。
トン・・・トン・・・
起き上がろうとする恋美がどうやら腰が抜けてしまい動くことができない。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
トン・・・トン・・・
泣き叫ぶ恋美の近くまで、その杖の音は近づいて来た。そして・・・
トン
止まった。
「我は石川幻慈。末代までの恨み晴らしたく思う。さぁ~答えよ。そなたの名前は? どこの一門だ? どこの血筋の人間だ? 」
森の中でそんな声が聞こえたので、周りを見渡すが霧でよく見えないが誰かが立っているのは分かった。霧がかかっているからだ。
その人は髪が腰まで長く、杖をついているように見える。そして右手の辺りは何か光るものが見えた。
「えっ? 誰ですか? 」
そう恋美が尋ねるも、その人影は、
「申せ、そなたの名前は? どこ血筋の人間だ? 」
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