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「死因は分からないんだろう。全部そうだ。ただ眠っているように死んだ」
橘がそう言っていると、奥から平川が出て来た。
「橘、またオカルトか? フン、落武者なんて現在に存在しないんだよ」
平川は鼻で笑うように答えた。
「だったら、あの女子高校生の話はどうなる? 」
「フン、あり得ないだろう。友達が急に死んで混乱しているのか、自分が犯人じゃないという無理な言い訳をしたいのだろう」
部屋が暑いのか、大森は汗を流し、ハンカチで拭きながら話した。
「ホントに、そんなんで自分の無実が証明できると思っているんでしょうかねぇ~。もっと常識の勉強をしなさいという感じですよ」
橘は立ち上り、短くなったタバコを、また流し台に投げつけた。
「だから橘さんやめて下さい! 事故現場ですよここは! 」
橘が部屋を出る扉の前まで行き、立ち止まって話した。
「大森、あの女子高校生が言っている落武者は本当に存在しないのか? 」
大森はため息をつきながら話した。
「当たり前じゃないですか! 何を言っているんですかぁ! 」
「でも、その存在があればこの事件は全部説明がつくんだよ」
橘はそう言いながら振り返り、薄ら笑いをうかべていた。
土曜日のファミリーレストランは大変混雑していた。そこに先ほどの刑事である大森がハンバーグにかぶりついていた。そしてその向かい側には平川が、こんな暑い日にも関わらずホットコーヒーをすすっていた。
「いやぁ~、橘さんは完全に頭いかれてしまいましたよ。昔はあれだけの難事件を解決してきた人なのに。あの女子高校生に会ってから、完全にオカルト野郎になってしまいました。だから2課に飛ばされるんです」
橘はそう言いながら、ハンバーグをバクバクと食べていた。別にそんな太っている訳でもないが、なんかハンバーグがよく似合う感じだ。
「でもどの死体にも外傷がない。鑑識の結果でも心臓発作も何も死因になるものはないという。本当にただ魂を抜かれたような、そんな感じだという」
平川がそう話している前で大森は今度はご飯にかぶりついて、ご飯粒をほっぺにつけながら話した。
「なんか新種のウィルスとか、なんかがあるんですかねぇ~」
「うむ・・・」
「だから刑事さん。石川幻慈さんを怒らしてしまったのです。だから由実も薫もさとみも恵理子も・・・。由実がそんな話をするから・・・」
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