石川幻慈さん

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徳代は両目の下に両指をそえて、泣きポーズをしながら茶化すように言ったので、瑠梨はまた少し注意した。 「徳代」 その時トイレの扉が開き閉める音がした。どうやら恋美が戻ってくるようだ。 「とにかく適当に私に合わせて。いい? 」 「いいよ。面白そう」 「分かったけど、ネタバラシはしてあげてよ」 「分かった分かった」 時子の申し出に全員賛同すると、そこに恋美がリビングに戻って来た。 「おかえり、恋美」 「ただいま」 時子は徳代と瑠梨にアイコンタクトした後、恋美に話し始めた。 「今2人と話してて、怪談話しようかって言っててさあーねぇ~」 時子はそう言いながら徳代と瑠梨を見た。 「いやだよ! 怖いの嫌いだもん。ねぇ瑠梨もいやでしょう」 瑠梨は時子の目をうかがいながら話した。 「いや・・・別に私はいいけど・・」 「じゃあ決まり! 」 「えーーーいやだ! 」 嫌がる恋美をよそに徳代は電気を消して、時子は1本のロウソクを立てて火をつけた。そして時子は話し始めた。 「みんな、石川幻慈さんって知ってる? 」 「あ~、なんか聞いたことはある」 徳代は聞いたことがあるらしいのだが、今若者の間で少しづつだが噂になって来ている都市伝説である。 「瑠梨知らない? 」 「え・・・知らない」 徳代が瑠梨に聞くも瑠梨は知らなかった。そして恋美はと言うと、 「ううううう」 耳を押さえながら声を出して聞こえないようにしていたので、 「恋美聞いて! 」 時子が耳栓している恋美の手を払いのけた。 「だって、怖いもん! 」 「聞けって言ってるよねぇ~」 嫌がる恋美を時子はギリッと睨んだので恋美は肩をすぼめた。石川幻慈さんも怖いけど時子も怖いのだ。 「もう! そんな怖い顔しないでよ時子は。恋美、大丈夫だから聞こう」 瑠梨が時子をたしなめて恋美を言い聞かせると、恋美は瑠梨くっついた。 「じゃあ~話すね」 時子がそう言うと、徳代と瑠梨は頷いた。  恐らく今より50年、いやそれよりも前かもしれない。今日のような小雨が降り風が吹き荒れ続いていた。  バスは京都の中心街から山道を走っていたが、いきなり停止し止まってしまったのだ。 「え・・・なんだ・・・」 バスの中では高校2年生の男女が40人ぐらい乗っていて、担任の女教師が引率していた。 「すみません。故障してしまったので、ちょっと修理します」
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