ペンの魔法は

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 次の日、魔法の紙の青年は日が落ちても現れなかった。  少しの期待を裏切られたような気がして私はますます気が滅入った。暗い顔で祖父の作った靴を履き、縁談の席に降り立った。  商家の家は裕福で、しかし子息は道楽者。部屋になにかと籠っては一人で笑って泣くような奇妙な男であるという。街の嫁から降ろされた私に似合いの変わり者。  私はぐっと俯いたまま、縁談の席は佳境を向かえる。ずっと黙ったままだった縁談相手が話し出す。  私は迎えに来ましたよ。どうかお顔を上げてください。  聞き覚えのある声に私は顔を上げ、目を丸くした。  そこにいたのは昨日うちへやってきた魔法の紙の青年だった。
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