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「賢…!」
呼ぶ声に、俺は目を開く。
真っ先に視界に入ってきたのは、馬鹿みたいに汚い顔で泣き腫らした光の顔。そして、いつものチームメイト達や、両親の顔だった。
「良かった…本当に良かった…!生きててくれて、ほんと良かったよぉ…!!」
点滴だらけの俺に、恥ずかしげもなく抱きついてくる友達に――俺がやっと、絞り出せた言葉はひとつだけだった。
「……ただいま、光」
おはよう、ごめんなさい、ありがとう、それから――それから。言いたいたくさんの言葉を詰め込んで、抱き締められるあったかい腕の中に投げ込んだ。
最善なんて、考えるだけ馬鹿げたこと。今更やっと気付いたのだ。あの時自分はそんなことさえ考える暇もなく、ただ光を助けたいとしか思っていなかったということに。守りたかったのは、光や皆のいる当たり前の毎日だったということに。
「お帰り…賢!」
目が覚めると、そこには君が待っていた。
俺の愛しい、大切な世界が――そこに居た。
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