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「…なんで俺を誘ったんだって聞いたら言ってたよ。“独りぼっちで寂しそうだったから”だとよ。本当に馬鹿みてぇ。よくわかんねー同情押し付けやがって、そういうのがうざいってのに!」
でも――多分、嫌いではなかったのだろう。
いつも誰かを笑顔にしようと必死で、何をするにも一生懸命な彼を見ているのは――退屈しなかったから。少なくとも、俺が“生きていてはいけない現実”を忘れかける程度には。
「…だから」
少年が、言う。
「だから、光が…あの子こそが生きているべきだって、そう思ったんだよね?」
ああ、なんで。なんでそんなことまで知っているのか、こいつは。
そうだ。その通りだ。だって。
「俺は生きていると周りを不幸にする。みんなの世界を駄目にする。でも、あいつは違う。俺とは逆なんだ。あいつは、生きていればそれだけで…いろんなやつを幸せにできるんだ」
だから――俺は、道路に飛び出したのだ。
そして突き飛ばした。ボールを追いかけてしまった、光の背中を。
「俺が此処に居て、あいつがいないなら。きっと結果は、俺が望んだ通りになったってことだ。俺は死んで、光は助かった。誰にとっても一番のハッピーエンドだ。これで全部、上手く転がるさ。歪んでたものも、間違ってたものも、全部」
「本気で、そう思ってる?」
「思ってるさ。俺は間違ってない…!」
そうだ、自分は――今度こそ正しい選択が出来たはずなのである。人生で、最初で最後の英断を。自分の為に生きてなどいけない俺が、生まれてはじめてちゃんと誰かの役に立てたのだ。生きるべき人間を生かして、綺麗に人生を終わらせられた。あれなら自殺ってことにもならない。余計な感情を周囲に抱かせずに済む。
そう、これで――俺という異物が存在する、あってはならない世界は消えるから。
だからきっと、それでいい。
「本当に良かった。……光が死なないで、良かった」
「そうだね」
少年は、頷く。しかし。
「でも、これは。一番のハッピーエンドなんかじゃない。君だって、本当はわかってるはずだよね」
何を言っているんだ、こいつは。俺はイライラと少年を睨み付ける。本当に、忌々しい奴だ。自分の行く手を塞いで、自分が知られたくなかったことまでみんな調べ尽くしていて。
何でこんな話をしてくるのだろう。俺はもう――迷いたくなんてないのに。
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