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「僕のために……」
「おう。最近、顔見なかったからな。今、お母さんとかいるか?」
「いや、仕事でいないよ」
「そっか」
そう言うと、真雪は勝手に上がり込んできて、適当に腰を落ち着けた。
「いろいろ大変だろ。何か手伝ってやる」
「え?」
「だから、足が使えねえっていろいろ不便だろ。俺、時間あるし。何でもやってやるぜ」
屈託のない笑顔だった。
「いいの?」
「おう! だって俺たち、友達だろ!」
「ありがとう」
「いいってことよ! で、何をすればいいんだ?」
「今からお昼ご飯のつもりだったんだ。冷蔵庫に母さんが作ってくれた料理があるんだ。花柄のお皿だ。それをレンジで温めてほしい」
「よし、すぐにやるからな」
真雪は立ち上がると、すぐに冷蔵庫を開けて言ったとおりのものを出した。そして、それをレンジの中に入れた。本当に言ったことをやってくれるらしい。しかし、レンジに入れたあと、なぜかその場で動かなかった。
「……河北くん? どうしたの?」
「いや、レンジが動かないんだよ。ちゃんと皿入れたのにな」
真雪はレンジをよくよく覗いていた。入れただけじゃ動かないよ、と心の中で突っ込みつつ、動かない足で台所に歩いた。
「こっち来なくていいって。座って待ってろよ」
「君に任せてたら、いつまで経ってもご飯が食べられないよ」
真雪を押しのけてレンジのボタンを押した。
「レンジはボタン押さないと動かないんだよ。そんなことも知らないの?」
「料理とかしねえんだよ」
「しなくても常識だよ――向こうで待ってるから」
「おう」
真雪はレンジの中をじっと見て、僕に返事した。
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