プロローグ~始まりの物語

13/36
前へ
/36ページ
次へ
 研修一日目。  木曜日の昼下がり、またもや友里は台西区役所の前にいた。今日から研修がスタートする。結局ぐるぐると思考を巡らせている内に一週間が経ってしまった。まだ足が宙に浮いている感じだ。  自動ドアから中に入り、受付に向かって歩き出した途端、後ろから声をかけられる。  「金白さん、こんにちは」  「あ、八王子さん……」  そこには説明会のとき会議室まで案内してくれた八王子の姿。安定の爽やかイケメン具合だ。  (今日も潤いをありがとうございます)  神社でお参りをする時のように、友里は心の中で八王子に合掌した。  「研修ですよね、前回と同じ会議室なのでこちらからどうぞ」  「ありがとうございます」  案内されたのはカウンター横の通路。  「今日の研修、僕が担当なんです。あとからお伺いしますね」  「あ、そうなんですね。よろしくお願いします、それじゃあまた」  笑顔の八王子に見送られながら、建物の奥へと進む。会議室の扉を開けた瞬間、ひときわ大きな声が友里を出迎えた。  「あ、やっと来た! 金白さん、こっちこっち」  手を振っているのは説明会で隣の席になり、LINE交換をした鳥越七海。促されるまま席に座る。     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加