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お昼になると人で溢れかえる24Fの社食で、同僚たちと他愛ない会話を楽しむ。友里のいつもの休憩時間の過ごし方だ。
その中で一番若い23歳の今どき女子、前川愛莉がスマホの画面を見ながら呟く。
「あー、今年も始まったみたいですよ。特別再生支援制度」
「この時期になるとやたらとニュースになるよね、それ」
その言葉に反応する40歳の中堅、宮前芳美。アラフォー同士ということもあって会社上がりにご飯に行くこともしばしば。仲は良い方だと思う。
彼女たちの話題に上っているのは、電車の中刷り広告や、ビルの看板でもやたらと主張してくる『特別再生支援制度』。
2042年現在。
2025年以降、超高齢社会と化した日本で若者を確保するため政府がとった政策は、少子化対策でも出生率の増加でもなく、『今いる人数でまかなうこと』だった。
つまり新しく子どもを増やせないなら、大人を若返らせて年齢のバランスを保とうというのだ。
モニターとして選出した被験者の時間を1年に1歳ずつ巻き戻しながら本格始動のために必要なデータを収集していく、というこのプロジェクト。実は20年ほど前から密かに始まっていたらしい。
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