プロローグ~始まりの物語

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 「人生のやり直しが出来たら」―友里もそう望んだことが無いわけではない。しかも若いが故に軽はずみな判断をしがちな小娘の思考に戻るのではなく、今の考え方のまま若返ることが出来るのだ。正直理想的だとも思う。  しかし関東地方限定のモニターとはいえ、人口約5000万人の中から選ばれるのだって相当難しい。何枠設けられているか知らないがそれほど多くはないだろう。  陪審員制度だって実際行われているのに全くリアル感がない。周りに体験者がいないからか、宝くじが当たることと同じくらい友里にとっては非現実的な世界だった。  休憩時間を終えて席に戻り、ノートパソコンを開く。顔をあげた瞬間、前から部長がやって来るのが見えた。  「金白さん、今ちょっといいですか?」  「あ、はい」  珍しい、仕事の指示はいつも上司の河野からなので直々に声をかけられることなんて滅多にないのに。  (もしかして派遣契約の終了……とか)  と、恐ろしい考えも浮かんだが、それなら派遣会社の担当営業から事前に連絡がある筈、と自分に言い聞かせながらミーティングルームで部長と向かい合う。  そこで渡されたのは「台西区役所」とプリントされた緑色の封筒だった。
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