プロローグ~始まりの物語

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 三日後。平日の木曜日、友里は台西区役所の前に立っていた。  今日午後13時に区役所を訪ねるように、という部長からのお達しに従ってみたものの、その目的や内容に関しては何も知らされていない。  (私……何かしたっけ? 前に区民税が払えなくて分割払いにして貰ったことはあるけど)  でもそれは30代の頃だからもう時効だろうし、それ以降はきっちりと納めている。しかも自分の住んでいる区域外の区役所にその理由で呼び出される筈もなく。  結論、「ここで考えていても仕方ない」。腹をくくった友里は建物正面の自動ドアに向かった。  吹き抜けの天井が印象的なロビー、窓は一面ガラス張り。まるでコンサートホールのような区役所内を受け取った封筒を手に進む。  「総合窓口」と書かれたカウンターの前で控えめに封筒を見せると、「少々お待ちください」とカウンターの奥に消えていく受付嬢。  数分後、その女性と一緒に若い男性がやって来た。  「金白友里さんですね。ご案内いたします、こちらへどうぞ」  「あ、はい」  男性に促されるまま受付の奥へと進む、どうやら区役所の内部に向かうようだ。二階への階段を昇り、長い廊下を案内役の男性と二人で歩いた。     
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