プロローグ~始まりの物語

7/36
前へ
/36ページ
次へ
 「すみません、急にお越しいただいて。当日まで詳細を含めて何もお知らせ出来ないという決まりになっていて」  「いえ、それは全然……大丈夫ですけど」  そう言いつつ、何となく男性に目をやる。20代前半位だろうか。  名札には「八王子雅人」の文字。  文句なしのイケメンで柔らかい空気感、そして何より公務員。絵にかいたような優良物件だな、と思う。  もっと友里が若ければキュンとか萌とか、彼をオカズに妄想の一つも出来たかもしれない。でも、枯れたアラフォーにとって目の前のイケメンはただの鑑賞物に過ぎない。 (美術館の絵画と同じようなもんだよね)  そんな失礼なことを思いつつも素知らぬ顔をして八王子の後をついて行くと、長い廊下の突き当りにある会議室に通された。  中にはざっと100人ほどの男女が集められている。年齢層は30代~60代位で若干女性のほうが多いかもしれない。戸惑いつつも席につくと、隣の女性が話しかけてきた。  「これって一体、何の集まりだと思います?」  「……さあ? 私も何も聞いてないから不安で」  「わかりますそれ! 良かったあ、同じ気持ちの人がいて」  人懐っこい笑顔が印象的な女性、年齢は同じか少し上に見える。彼女と話すことで、張りつめていた気持から少しだけ解放された。     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加