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おれは自分のことをそう思ったことはない。いつもそばにいるネッケが後先考えない性格だからそう見えるだけで、おれはただ現状を把握して物事を冷静に捉えているだけだ。
「俺バカだからよくわかんねぇけど」
おれのこめかみがピクッと動いた。ネッケがその枕詞から発する続きを、ガキの頃から何度も聞かされてきたから。
「いま動かなかったら、きっと後悔する」
「さすがネッケさん! そうでなくっちゃ!」
チャランはここで叩き斬ってしまいたい。
「ネッケ、いまの装備ではパーティーは全滅する」
おれは間違ったことは言っていない。10人中9人は頷く意見だ。それが10人中10人にならないのは、ネッケのような型破りの擬人化みたいな奴が存在するせいだ。
ネッケは一呼吸おいて語る。
「ショージィ、お前はいつだって正しいよ」
否定するくせに正しいと言う。
「けどさ、いつもそれが100%の答えだとは限らないぜ」
確率の問題ならその通りだ。100%はあり得ない。せいぜい99%だ。
「俺は、たった1%でも可能性にかけたいんだ」
おれは額の汗をチーフで拭った。もう深夜になるのにとても暑い。この国は、はじめての上陸だから余計に慎重になるべきだとも思う。
「死ぬぞ、ネッケ」
「いままで死んでないだろ」
強烈なアタックボールを額に受けた気分になる。
「やめてください」
涙声の少女のが割って入った。
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