4 最低のサディスト

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「俺はこういう愛し方しか出来ない」 淡々とそう言いながら高支那が一歩一歩近づき、ついにはタケルの傍までやって来た。 タケルは震える瞳で高支那を見つめていた。身動き出来ない身体を壁に委ねたまま――。 すると高支那は、ふいにタケルの身体を包み込むように自分の方へと引き寄せると、上着をその冷えた裸体に覆い被せたのだった。 タケルは一瞬体を強ばらせたが、すぐにその温もりに安堵ともつかぬ息を吐き、体の力を抜いた。高支那の思わぬ行動に、張りつめていた緊張の糸が一気に切れたのだ。 そして表情を変えることなくそれを見届けた高支那の次の行動は実にあっさりしたものだった。まるでタケルを突き放すように背を向けたのだ。 タケルは何も言葉を発せないまま、去って行く高支那を見守るしかなかった。 部屋から出る時、高支那が最後の言葉を口にした。 「今日はもうあの男は来ない。ゆっくり休め」と。 その言葉通り、その夜、謎の男が姿を…いや、気配を現すことはなかった――
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