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「このまま…」
だがその低く沈んだ声は、まるで独り言のようにタケルには聞こえた。なぜかそのまま言葉は途切れてしまう。
思わず息を詰め高支那の冷めた横顔を見つめる。
高支那が何を言おうとしたのかどこか探るように。
このまま――
その先が気になるタケルだったが、真っ直ぐ前を見つめる高支那の瞳はどこまでも冷淡で、言葉をかけることは出来なかった。
いつしか深夜の海岸沿いを走る車の窓から、暗闇の海に視線を転じたタケルは、高支那の口にした言葉の続きを考える。
しかし、
このまま…
…車ごと海に落ちようか…
そんな危ないセリフが不意に浮かび、慌ててそれを振り払う。
我ながら馬鹿げた発想だとは思うのだが、どこかで高支那ならそんなことを言い出しそうな気がして、タケルは思わず眉をしかめたのだった。
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