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どこまでも続く目の前の深い闇を見つめていると、どうしても考えが悪い方へと向いてしまう。
タケルはそっと目を閉じた。
無理矢理、頭の中から高支那の存在を消してしまおうとするのだが、むしろ逆に気持ちは溢れてくるばかりだった。
その疲れからか、いつしかタケルはウトウトしてしまい、どれぐらい寝ていたのか、次に気づいた時には車は停車しており、隣に高支那の姿はなかった。
ハッとしたタケルが慌てて車を降り周りを見渡すと、そこは既に朝の様相を呈していた。
外はさすがに寒く、タケルは一瞬身を震わせたが、さらに自身を驚かせることがその目に飛び込んできたのだ。
目の前にあったのは、断崖絶壁にかけられた古びた吊り橋。
さらに吊り橋を隔てた向こう側には、高支那が無表情で立ち尽くしてした。
その表情にどこか不安を覚え、目が離せないタケル。
そしてタケルは意を決したように足を踏み出した。
吊り橋へと――
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