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「ん?何の音?」
「あら、いけない。お菓子焼いてたの」
「ああ、懐かしいな。大丈夫なのか?」
「気にしないで。あげるものでもないし、昔からやってるんだからそうそう失敗しないわよ」
「…でも、タイミング悪かったな。また、掛けるよ」
「えぇ、待ってるわ」
引き止める事はない。私からは絶対に。
「紀沙」
「何かあったら、俺には言えよ」
「…本当、心配し過ぎよ。何もないわ」
通話の切れた受話器を静かに下ろして、オーブンに手を掛ける。
形も色も美しく仕上がったパイ生地が香ばしさをふわりと纏う。
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