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「そんな商品、メニューにないですが……」
そう言った俺の目を見据え、彼女は言った。
「毎年7月7日から一週間この町の七夕祭りの時期にだけ飲むことができる。メニューブックにものっていない秘密のメニュー……ですよね?」
すべてを知っているというように言った彼女を見て俺は黙り込んだ。
「ごめんなさい。ずっとこの町を離れていたとは言え、私も町長の娘ですから。噂くらいは耳にしたことがあるんです。今日はそのために娘を連れてきました」
そう続けた雅美さんの顔を見て、詩織ちゃんは不思議そうに首を傾げた。
「お願いします。飲ませてください」
その言葉に答えを出せなかった俺は、親父の顔を見つめた。
少し悩んだ表情を見せた後、コクリとうなずいた親父はカウンターを出て店のドアにかかる「OPEN」の文字をパタリと「CLOSE」に変えた。
「亮彦、ご案内を」
その言葉にうなずいた俺は雅美さんに視線を合わせ
「準備をしますので、こちらへどうぞ」
と店の奥の本棚をがらりと横にずらした。
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