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「隠し扉……」
ぼそりとつぶやいた雅美さんは詩織ちゃんの手を引くと、そっとその扉の奥へと足を踏み入れた。
中は4脚の椅子がおさめられたアンティーク調のテーブル、そして部屋の隅にポツンと置かれた1脚の椅子があるだけだ。
がらりと再び扉を元の位置に向けて動かすと、びくりと体を動かした雅美さんは慌ててこちら側を見つめた。
「大丈夫です。準備ができたらまた扉を開けます。それまではそちらに座ってお待ちください」
俺の言葉に従い、雅美さんはおそるおそる目の前の椅子に腰をかけた後、傍らに詩織ちゃんを座らせた。
二人がいなくなって静かになった店内で、一番最初に声を発したのはひかりだった。
「私、実際に頼んだ人に会ったの初めて……」
その言葉に同意するように隆也と元太もうなずいた。
「たいていの人は人がいないかを確認して入ってくるからな」
そう俺が答えると、なるほどとひかりはうなずいた。
「亮彦は経験あるのか?」
元太の言葉に
「あぁ、小さい頃から見てるから。我が家の宿命」
と答えると、3人は再び押し黙った。
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