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「和仁さん、急に呼び出してごめんなさい」
「いや……でも何で」
まだ何が起こっているか分かっていない様子の彼に雅美さんは
「ここは天川町……できれば生きている間に、あなたを連れてきたかった」
と優しく語りかけた。
何かを悟ったように雅美さんの顔を見つめた後、俺の方をじっと見た彼は
「本当に……存在したんだな」
とつぶやいた。
どうやら彼も、この店の秘密を知っていたようだ。
天川町にある喫茶店・カササギ。
先祖代々茶屋として引き継がれてきたこの店を、祖父が喫茶店に変えた。
形を変えても変わらずこの町に親しまれてきた店を父が引き継いで既に20年。
町の人たちにとっては誰かに会える憩いの場として存在しているこの店には、ある秘密があった。
毎年7月7日から一週間にわたり開かれる七夕祭りの期間。
この店でメニューブックにも掲載されていない秘密のメニューを口にすると、二度と会えなくなった者の魂と再会を果たすことができる。
多くの場合それは死者を指すが、時にはまだどこかで生きている者の生霊を呼び起こす人もいる。
橋渡家はそんな人々の“再会”を先祖代々見届けてきた。
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