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俺は手元に抱えた本をパラパラとめくった。
俺が開いたその本は、普段、店の本棚の端っこでひっそりと眠っている。
たまに店を訪れた客がふいに本を開き
「この本、何ですか?白紙ですよ?」
と尋ねてくる。
そんな客に、親父はいつも
「それ、背表紙がおしゃれでしょ。飾りで置いているんですよ」
と冷静に答えを返した。
しかしこの本は、そんな飾りで置かれるような代物ではない。
ここにやってきた魂がいったいどんな人物であるか、この部屋にいる間だけ、その人の人生が浮かび上がる一冊だ。
この本がないと俺たちは、ここに魂を呼ぶことができない。
正確には魂を呼ぶことは可能だが、得体のしれない誰かと対峙するリスクは犯せないということだ。
俺たちには魂をここに呼び寄せてしまうことへの責任がある。
少しでもトラブルを回避するために、この本の存在は不可欠だ。
そんな大事な本をなぜ、無防備に本棚に置いているのか、と尋ねたことがある。
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