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「ほら、詩織も謝って」
そう言われた詩織ちゃんは戸惑ったように首を傾げた。
「私、悪いことしたの?」
困ったように詩織ちゃんを見つめる雅美さんを見て、俺はそちらに歩みを進め、詩織ちゃんの前にしゃがみこんだ。
俺の顔を見て詩織ちゃんは再び雅美さんの後ろに隠れ、ギュッと母のズボンを握った。
「詩織ちゃんは何も悪いことしてないよ」
俺の言葉に彼女はちらりとこちらに視線を向けた。
「助けてくれて嬉しかった。……ってブラッキーホールが言ってた」
「本当に?」
不安げにそう言った彼女に
「うん。本当。ありがとう、って」
と答えると、詩織ちゃんの表情はとたんにぱっと華やぎ
「良かった」
と照れたように笑った。
「詩織ちゃん、お礼に何でも好きなもの飲んで良いよ。おじさんがごちそうしてくれるって」
そう言って親父の顔を威圧的に見つめると、親父は一瞬驚いた表情を見せた後、観念したように
「何でも好きなもの言って」
と詩織ちゃんを見つめた。
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