257人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
ー 一年生の圭君にパテルが
決まったんだって
ー ほんとだ。腕のリボン、金色になってる!
ー 僕、見たよ、ハゲた金持ち風の中年男!
このルーンヌィ バレエスクールのフロアでは
そんな会話が日常的に交わされる
今朝もやってきた講師の一人が皆を集めて告げた
『今日は6月に行われるバリエーション大会出場者の第一次選考ですね。
選考会とはいえ、あなた方クリエンテラを見学しにパテル候補の方が来られますから、自分の技術と将来性をしっかりアピールして』と。
ここにはバレエのプロを目指していながら、経済的に困難を抱えている生徒達があちこちから集まってくる
蓮もその一人だった
クリエンテラと呼ばれる彼らは、自分達の将来性をアピールし、経済的支援者であるパテルから選ばれればいろいろな援助を受けることができる
ルーンヌィにおいて、その仲介を務めるコーディネーターの一人がバレエ講師でもある倉木 慎だ
彼は、
「彼らがプロとして世に出るチャンスを与えて頂く為、我々スクール側が、バレエに掛かる費用とその生活を援助して頂く方を募っているんです」
と、毎回同じ言葉でパテル候補の見学者に説明し、レッスン生を紹介するのだ
「蓮、いい加減に五条さんからの支援を受ける姿勢を見せないと。
バリエーション大会へのオーディションに通過したら、費用がかかるのですよ。
シューズもあんな汚いものでは舞台に出せません」
倉木は出席簿を受け取りながら、今日も小声で蓮を叱責する
「はい、、、」
「自分がどうしてこのスクールへ来たのか、よく考えなさい」
蓮は床を見つめ、下唇を噛んだ
かねてより蓮を支援したいと申し出てくれている
五条というパテル候補がいるにも関わらず、蓮はどうしてもその申し入れが受け入れられなくて返事を濁しているのだ
「君は我がルーンヌィの優等生だと思ってます。
技術だけでなく、クリエンテラとしても下級生はもとより上級生達の手本にもならないと、、、わかりますね?ましてや、、、、」
倉木の説教は続く
それだけ今の蓮の状態は許され難いものだった
最初のコメントを投稿しよう!