プロローグ

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「結局、全部惨敗かーー」 壮大なため息の後にぼんやりと俊哉は呟いた。 始業式が終わり1ヶ月が経った学校は、ザワつきがなくなった代わりにテストに嘆く生徒や歓喜する生徒で溢れかえっていた。 勉強が大の苦手である俊哉は、もちろんテストに泣く側の人間でありテストが返却されるたびにため息も大きくなっていた・・・ 「前日すら『テストは実力で受けるもの』とか理由つけてゲームしてるからそうなるんだよ、また追試の時は俺が必要だな?」 毎日耳にする少し低めの声である。 振り返らなくともそこには高得点のテストを持ち、得意げに笑う高身長の美男子がいるであろうことは想像出来ていた。 彼は1年の時に俊哉が「趣味はスポーツ観戦」と言ったことと席が隣だったことで仲良くなれた中村澄真で、勉強も運動もできる上、誰にでも優しく接する理想的な男子だ。 そんな彼の弱点を探してもう1年になるが、わかったことは友情に純粋であることだけだった。 もし彼がクラス上位のメンバーとよく関わっていたのなら、きっと彼はクラスのリーダー的存在になっていただろうが、今日も相変わらず爽やかな笑顔で俊哉とつるんでいる。 「何となく今回は乗り越えられる気がしたんだよー」 そんな彼の顔を見ることさえ嫌になるほどの点数を取っていた俊哉は、まるで机を溺愛しているかのようにうつ伏せながらいつもの言い訳を発していた。 「人生そんなに甘くねぇってことだな」 「テストだけが人生じゃねぇーよ」 テストの話が人生にまで発展したことに少し呆れ混じりに笑みが零れた。 これが勝者の余裕ってやつか、と思いながら俊哉はバレないようにその笑みを隠し、澄真の得意げな立ち姿を見て この不変的な日常の醍醐味を感じていた。
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