普遍的な日常

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それから一週間の勉強計画が練られ、全て俊哉の家で行う事になった。 そのため帰宅した俊哉のやることは多かった。まず、数週間しっかりと整理していなかった部屋を綺麗に片付け、親には追試になったことを告げ、その勉強会を行う許可を得なければいけなかった。 ちなみに俊哉の母親はハーフであり、母自身も日本では成績が良くなく、楽天家だったために、父親ではなく母親に追試から勉強会の流れを伝えればそこまで咎められることはなかった。 一番の問題は部屋の片付けであった。ポジティブに考えれば部屋を掃除する良い機会なのかもしれないが、それを明日までにやらなければならないというのは、明日までずっと過去の自分を恨み続けるということに等しかった。 そして今日が終わり、やっと過去の自分を恨まずに済むようになった日の朝になった。 いつもの様に気だるく体を起こし、用意された朝食を食し、登校の準備を完了させ自転車に乗る。あの二人と会うまでの短い距離を行くために軽快に漕ぎ始める。 確かに前日の掃除は疲れたのかもしれないが、意識が飛びそうという程でもなかった。 ただ、そう、今日という日がどうなるのか想像していた。 もしかしたら最初に見る友の顔を想像していたとか、最初に見る花を思い浮かべたのかもしれない。 ただいつもの日常を見ていた。 日常を・・・ 瞬きをするとそこは暗くなり、腹部から何者かに抱擁されているかのような暖かさと、痛みという言葉で賄いきれるのかわからない感覚が彼を襲った。その感覚を忘れたいと願い、強く瞼を閉じると。 己の意識と共に、彼への抱擁は脈打つほどに薄れていった。
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