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俊哉は夢を見ていた。
僅かな光のみが射し込む暗闇に落ちていくような、そんな不安を感じさせる夢であった。
しかしそこには光があった。僅かな光だが、温もりを感じられるような優しい光があった。
目が覚めると少し眩しかった。
部屋は薄暗いようなのだが、その少しの光さえも眩しく感じた。
「おはよう。」
突然かけられた声に戸惑いを感じていた。
聞いたことも無い無機質な声だったということも戸惑った要因なのかもしれない。
「お・・・はぁ」
とりあえず返事をしようとするが、何故だろうか
俊哉は「おはよう」という声すら上手く発音できなくなっていた。
「長い間眠っていたから、少し眩しいだろう。1日かけて照明を明るくしていくから安心してくれ。」
その「長い間眠っていた」という発言は、見知らぬ薄暗い部屋で目覚め、無機質な声に介抱され、声も出せなくなっている俊哉を更に困惑させてしまった。
そのため俊哉は状況を整理しようと無機質な声を無視して自分の身に起きた事を振り返ることに専念した。
いつもの様に自転車で通学している時、急に激しい痛みが腹部に走った。そして異様な温かさを感じた。
「そうだ!体は!?」
何事もなかった。まだ起き上がることは出来ないのだが、手も足もしっかりと繋がり神経が通っている。腹部に違和感もない。
四肢が繋がっており、少し筋肉が衰えてる以外には体に異常がないことに安心し、更にゆっくりと思い返していく。
「あの激痛の後に目の前が真っ暗になった、気を失ったと予測すると、ここは病院か?」
そう思い薄暗い部屋を凝視してみる
そこは清潔感のある綺麗な個室であった。
しかしながら俊哉の見覚えのない病院であったことから、近所の小さな病院ではなく、どこかの大学病院などに運び込まれてたのだろうと考えた。
それにしてもさっきから応答してくれていた無機質な声は何なのだろうと俊哉は感じていた。
AI(人工知能)だろうと思ったが、スマホに入ってるレベルのものしか知らない俊哉は、最新型の医療ロボットはかなり進化しているのだなっと感心していた。
少しだけ状況を整理出来た俊哉には余裕が出てきたらしく、その医療ロボットらしき物に話しかけてみることにするが、まだ上手く声はだせない。
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