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住宅地の夜は、早い。
たくさんの人が住んでいても、人通りは早々になくなる。コンビニだって、二軒が競い合うように立っていたりはしない。
藍色の空は、いつの間にか濃い灰色になっていた。いかにも都会周辺らしい。
曇りでなければ星が出ているはずで、六年生とはいえ、ボクのような小学生が散歩する時間じゃない。もっともさっき通り過ぎた公園には、見覚えのある顔の小学生が三人ほど遊んでいたが、まあ例外だろう。
じっとりとした夏の夜、少し前の夕立で舗装道路は濡れていたが、ボクの犬はさして気にした様子もない。
リード紐をぐいぐいと引っ張りながら、散歩を楽しんでいる。
「そんなに急ぐなよ」
ボクは犬に声をかけた。犬の名はシロク。白黒、からきている。体の大半が黒いが、首の周りと鼻のあたり、足の先などところどころが白い。こんな夜だと、首周りの白い毛がマフラーのように、ぼんやりと浮かび上がる。
シロクはボクの犬なので、散歩はボクの役目だった。
そして、今日は雨だからシロクの散歩はないはずだった。しかし、夕方遅くに雨が上がったので、ボクは散歩をせがむシロクをやむなく連れ出した。
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